日本消化器内視鏡学会甲信越支部

3.小腸へ浸潤し、腸間膜リンパ節由来と考えられた濾胞性リンパ腫の1例

長野県立須坂病院 研修医
樋口 祥平、坂本 広登、林 幸治
長野県立須坂病院 内科
張 淑美、下平 和久、松沢 正浩、坂口 みほ
長野県立須坂病院 内視鏡センター
赤松 泰次

症例は78歳の女性。2011年11月に悪心、嘔吐を主訴に来院した。理学所見で表在リンパ節は触れず、右上腹部に手拳大の硬い腫瘤を触知した。イレウスを疑って腹部CT検査を行ったところ、上部小腸に大きなmassを認めた。小腸X線造影検査では、空腸に圧排所見と約35cmにわたる収束像、およびその肛門側に偏側性の狭小化を認めた。シングルバルーン小腸内視鏡ではトライツ靭帯より約50cm肛門側から腸管の伸展不良がみられ、さらにその肛門側に潰瘍形成を伴う偏側性の隆起性病変と狭小化がみられた。鉗子生検ではdiffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)と診断された。それ以外の消化管には異常はなく、PET検査では腹部腫瘤に一致して集積を認める以外にも数ヶ所異常集積を認めた。骨髄検査ではlymphoma cellの浸潤はみられなかった。「壁外へ発育した小腸原発悪性リンパ腫」、あるいは「腸間膜リンパ節由来の悪性リンパ腫の小腸浸潤」の両方の可能性が考えられたが、小腸X線所見より後者の可能性が高いと判断した。以上より小腸へ浸潤した腸間膜リンパ節由来のDLBCL、stage IIIと診断した。治療については、化学療法を先行させると小腸の穿孔、出血、狭窄などの合併症が生じる可能性が高いと考えられたため、まず浸潤した小腸病変とbulky massに対して可能な限り外科的切除を行った。切除標本の病理組織所見では免疫組織染色の所見も併せて、一部DLBCLへ形質転化した濾胞性リンパ腫(grade 3b)と診断された。現在、残存病変に対してリツキシマブを併用したCHOP療法を行っている。