日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2.B-RTO抵抗性の孤立性胃静脈瘤に対し胃腎シャント閉塞下のEISが有効であった1例

信州大学 医学部 附属病院 消化器内科
野沢 祐一、菅 智明、横澤 秀一、岩谷 勇吾、山田 重徳、奥原 禎久、岡村 卓磨、小林 聡、大工原 誠一、中村 真一郎
信州大学 医学部 附属病院 内視鏡センター
新倉 則和
信州大学 医学部 附属病院 放射線科
黒住 昌弘

【症例】50歳代男性.患者は健康診断で肝障害を指摘され当院初診となった.アルコール性肝硬変,食道胃静脈瘤と診断されたが,まずは経過観察の方針となった.初診から1カ月後にふらつき,黒色便を主訴に近医を受診し,胃静脈瘤からの出血が疑われたため当院へ緊急搬送された.内視鏡検査所見や腹部造影CT検査にて活動性の出血はないと判断し,待機的治療としてバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を行う方針となった.第2病日にB-RTOを行った.第3病日にカテーテルからの血液の逆流がないことを確認し,静脈瘤の血栓化は得られていると判断した.B-RTO一週間後に腹部CT検査を行ったが,静脈瘤は血栓化されていなかった.そのため、二次治療として胃腎シャント閉塞下にシアノアクリレートを用いて内視鏡的硬化療法(EIS)を行い,静脈瘤の硬化を確認した.退院後再出血はなく, CT,上部消化管内視鏡検査では,静脈瘤は縮小傾向である.【考察・結語】孤立性胃静脈瘤の待機・予防例にはB-RTOやシアノアクリレート系薬剤を用いたEISが行われる.なかでもEISはB-RTOが困難であった症例にも有効であったとの報告があり,また手技的にも慣れてしまえば比較的簡便であることから胃静脈瘤治療として有用である.しかしシャント径が太く血流の多い静脈瘤では,塞栓症などの危険を伴うことから,その場合にはバルーンカテーテルで胃腎シャントを閉塞し,静脈瘤内の血流速度を低下させることで,より安全にシアノアクリレートを用いたEISを施行できると考えられる.