日本消化器内視鏡学会甲信越支部

63.計13回の内視鏡的ネクロゼクトミーを要した難治性巨大不整形膵仮性嚢胞の1例

信州大学医学部附属病院 消化器内科
渡邉 貴之、丸山 真弘、伊藤 哲也、米田 傑、丸山 雅史、村木 崇、浜野 英明、田中 榮司
信州大学医学部附属病院 内視鏡センター
新倉 則和

症例は70歳代、男性。2010年9月、近医にて総胆管結石の疑いでERCPを施行しERCP後重症膵炎を発症した。膵炎は保存的加療にて改善したが、2週間後のCTで膵前面に仮性嚢胞の形成を認めた。6週間後の CTで嚢胞の最大径は18cmまで増大しており、一部は左後腎傍腔や左大腿動脈根部まで細長い管腔を形成していた。経過にて腹部膨満感が出現し症状は徐々に増悪したため11月、超音波内視鏡ガイド下嚢胞ドレナージ(EUS-CD)目的に当科入院となった。初回EUS-CD時には、経胃的に膵仮性嚢胞を穿刺し内瘻ステントを1本留置した(day1)。この際、外瘻の追加も試みたが留置できなかった。Day6、嚢胞内感染を発症し外瘻を追加留置した。外瘻追加後も39℃台の発熱と腹痛は継続したため、day7に瘻孔を拡張後、内視鏡的ネクロゼクトミーを施行した。嚢胞内には壊死物質や膿などの貯留を認め、可能な限り除去・洗浄を行ったがその後も発熱・腹痛は続いた。以後、週1-2回のネクロゼクトミーに外瘻を用いた生理食塩水での嚢胞内洗浄を併用し、ネクロゼクトミーでは内容物除去にネット鉗子や把持鉗子を用い、細長い管腔の内容物除去にはバルーンカテーテルを使用した。Day66、13回目のネクロゼクトミー時には嚢胞内容物はほぼ除去され嚢胞内面はきれいな肉芽で覆われていた。Day67以降、発熱やCRPの上昇を認めずDay90に退院した。現在、退院より8ヶ月経過したがCTでは嚢胞はほぼ消失し再感染なく経過している。今回、EUS-CDのみではコントロール困難な感染性膵仮性嚢胞に対し、内視鏡的ネクロゼクトミーが有効であった1例を経験した。しかしながら壊死物質が完全に除去されるまで感染は終息せず計13回のネクロゼクトミーが必要であり治療に難渋した。内視鏡的ネクロゼクトミーに関し文献的考察を加え報告する。