日本消化器内視鏡学会甲信越支部

60.膵管胆管合流異常症、膵管非融合に膵尾部癌を併発した一症例

長野市民病院 消化器内科
神保 陽子、越知 泰英、長谷部 修、原 悦雄、須澤 兼一、関 亜矢子、長屋 匡信、多田井 敏治
長野市民病院 外科
林 賢
長野市民病院 病理診断科
大月 聡明

症例は53歳女性。2011年4月頃より上腹部痛が出現し近医を受診した。同年5月、近医での腹部超音波にて膵尾部嚢胞性病変を指摘されたが、鎮痛剤での対症療法にて経過観察となった。約2週間後、上腹部痛の悪化を認め近医を再診したところ、膵尾部嚢胞性病変には著変はなかったが、採血にてCA19-9 870.2 U/mlと高値を指摘され同日当科初診となった。当科での腹部超音波検査、CT、MRI上膵尾部に約30×21 mm大の低吸収を認めその尾側に長径45 mm大の多房性の嚢胞性腫瘤を認めた。膵尾部癌StagIIと考えられた。ERCPでは膵管胆管合流異常を認めたが、胆管最大径10.77 mmで結石や腫瘤形成を認めなかった。また、膵管非融合があり副乳頭造影にて尾部膵管に先細り、中断を認めた。尾部膵管からの細胞診では有意所見を得られなかったが、CA19-9高値、画像所見より膵尾部癌と診断した。同年6月膵体尾部腫瘍切除術、横行結腸切除術を施行した。病理結果では嚢胞壁は粘液産生腫瘍性細胞と非粘液産生腫瘍性細胞が混在し、腫瘍浸潤層も同様であったため粘液産生性の膵癌が疑われた。現在、術後化学療法を施行中である。膵管胆管合流異常、膵管非融合に膵癌を併発した症例を経験したので報告する。