日本消化器内視鏡学会甲信越支部

57.悪性腫瘍との鑑別が困難であった虫垂放線菌症の一例

済生会新潟第二病院 消化器内科
窪田 智之、阿部 寛幸、長島 藍子、廣瀬 奏恵、冨樫 忠之、石川 達、関 慶一、本間 照、吉田 俊明
済生会新潟第二病院 外科
田邊 匡
済生会新潟第二病院 病理診断科
石原 法子

【症例】70歳代男性【家族歴】弟 喉頭癌【現病歴】高血圧、糖尿病にて近医および当院へ通院していた。2011年3月初旬より右下腹部違和感を自覚し始め、便秘となったが、発熱はほとんど認めなかった。3月15日近医のUSで回盲部に6cm大の低エコー性腫瘤を指摘され、3月23日当科紹介された。【現症】身長157cm 体重50.4kg 血圧134/64mmHg 体温37.1度 腹部 右下腹部に手拳大の硬い腫瘤を触れるが、圧痛はなし。腹水徴候なし。腸音亢進・低下なし。【血液検査】WBC 10100/μl、CRP 8.23mg/dl、CEA 2.3ng/ml、CA19-9 2.4 IU/ml、HbA1c 7.9%【臨床経過】腹部骨盤造影CTでは虫垂に不均一から一部輪状に造影される6×3.5cmの腫瘤状陰影を認めた。周囲域脂肪織の濃度上昇を伴っており、少量の腹水を認め、1cm前後の結節が多数見られた。周囲の回腸も巻き込まれ、ひきつれていた。口側腸管の著しい拡張は認めなかった。下部消化管内視鏡では虫垂口に小びらんと白色膿汁を認めたが、培養検査から有意菌は検出されなかった。膿瘍を伴う虫垂腫瘍が否定できず、また周囲腸管への浸潤像も疑われ、右結腸切除、回腸・S状結腸部分切除術を施行した。術中迅速診断でも悪性細胞は検出されなかった。病理組織学的には虫垂の壁構造は一部消失し、膿瘍を形成し、周囲に高度の炎症を伴っていた。膿瘍内部に少量の粘液とグラム陽性桿菌の菌塊を認め、放線菌症と診断した。【結語】腸管放線菌症は腫瘍性病変との鑑別が困難なことが多く、本疾患が鑑別に挙がらなければ切除例でも見過ごされることがある。比較的稀な疾患であり、本症の臨床像を紹介する。