日本消化器内視鏡学会甲信越支部

56.大腸内視鏡検査前処置不良時のColonoscopic enema法の実際

昭和伊南総合病院消化器病センター
堀内 朗

目的: 当院では、2008年から朝食を摂らずに来院されれば、予約なしに大腸内視鏡検査が受けられる。以前には前処置が不十分であるため、あらためて別の日に大腸内視鏡検査を予定せざる得ないことが時にあった。こうした前処置不良状態の患者でさえその日に良好な大腸内視鏡検査を実施するための対処法として、当院ではColonoscopic enema(CE)法を実施してきたので報告する。方法: 対象は、当院にて2009年11月から2010年10月の期間に食事制限や前夜の下剤の服用歴がなく、受診後の午前中にポリエチレングリコール溶液(PEG溶液)を飲用し、その午後に大腸鏡内視鏡検査を試みた症例。PEG溶液が飲用できないかあるいは飲用したがまったく排便がなく、左側結腸内に便塊が認められた場合は前処置不良例としてCE法を実施した。CE法はプロポフォール鎮静下で内視鏡を肝彎局付近の横行結腸まで挿入し、PEG溶液500mlを鉗子チャンネル口から注入する。注入後内視鏡を抜去し、覚醒後直ちにトイレに移動し排便を待った。十分な排便後、プロポフォール鎮静下で大腸内視鏡検査を施行した。結果: この期間に当日受診で大腸内視鏡検査を試みた症例は530例。そのうち、26例(4.9%)がCE法を施行した。平均年齢は59歳(29-79歳)で女性が19例(73%)であった。CE法により 25 例が極めて良い前処置状態が得られ、26例全例において検査は可能であった。26例のうち、大腸腺腫7例、大腸癌1例を認めたが、大腸穿孔等の偶発症はまったくなかった。26例の当センター平均滞在時間は、7.6時間(4.7-8.8時間)で全例安全に帰宅可能であった。結論: CE法は、別の日にあらためて検査を予定しなければならない前処置不良症例に対して有用と思われた。