日本消化器内視鏡学会甲信越支部

55.皮膚隆起性線維肉腫術後孤立性膵転移の1切除例

信州大学病院 消化器外科
古澤 徳彦、小林 聡、横山 隆秀、中田 岳成、清水 明、本山 博章、北原 弘恵、北川 敬之、高須 香吏、福島 健太郎、宮川 眞一

症例は50歳男性。2010年12月に当院皮膚科にて腹壁の皮膚隆起性線維肉腫に対して腫瘍切除術が施行された。術後3か月の腹部造影CT検査にて膵尾部に腫瘍を指摘され、経過観察中に増大傾向を認めたため、精査加療目的に当科を紹介された。術前のCTでは最大径25mmの不均一な造影効果を伴う腫瘤として描出され、鑑別診断として神経内分泌腫瘍、膵腺房細胞癌、線維肉腫術後膵転移の可能性が示唆された。また、線維肉腫の局所再発やリンパ節転移、肺や肝臓など他臓器への転移を疑う所見は認めなかった。FDG-PETでは局所への集積は乏しく、血液学的検査では血清ガストリン値が588pg/mlと高値であり、CEA・CA19-9の上昇を認めなかったことから、術前診断としてガストリノーマを第一に考えた。最終的には術中迅速病理診断の結果により術式の決定を行う方針とし、2011年9月に腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した。摘出標本の迅速診断では、異型紡錘形細胞の束状配列を認め、皮膚科手術時の標本と類似した像を呈しており、線維肉腫膵転移の診断がなされた。経過良好にて術後14病日に退院し、現在外来にて経過観察中である。術後補助療法は施行していない。線維肉腫膵転移の本邦報告例は会議録を含め3例を認めるのみであり、自験例のような孤立性の膵転移は極めて稀な病態である。文献的考察を加え報告する。