日本消化器内視鏡学会甲信越支部

52.R-CHOP療法で完全寛解した後膵体部癌を発症した膵原発性悪性リンパ腫の一例

国立病院機構 まつもと医療センター松本病院 消化器科
宮林 秀晴、松田 賢介
国立病院機構 まつもと医療センター松本病院 内科
松林 潔、小林 正和、古田 清
国立病院機構 まつもと医療センター松本病院 外科
中川 幹、松村 任泰、小池 祥一郎
国立病院機構 まつもと医療センター松本病院 研究検査科
中澤 功
信州大学医学部 消化器内科
新倉 則和

症例は57歳・女性2006年12月上旬から食欲不振となり当院を受診。外来受診時理学所見で腹部に弾性硬の腫瘤を触知し、精査のため入院。腹部CTで約6-7cmの低吸収域とエンハンスされる腫瘤を膵頭部に認めたのみで周辺リンパ節・傍大動脈リンパ節腫脹は認めずCTパターンからリンパ腫を疑い、EUSとERCPを施行。主膵管の圧排所見と主膵管・分枝の狭窄は認めず、同疾患を疑いブラシ細胞診をしたところ悪性リンパ腫と診断した。EUS-FNAのため、信州大学消化器内科に紹介。EUS-FNAによる組織診・細胞診でびまん性B細胞性悪性リンパ腫(DLBCL)と診断され6回のR-CHOPによる化学療法を施行し画像診断で完全寛解となった。その後2008年7月PET-CTにて縦隔リンパ節の再発を認め、R-CEPP/R-CHOP交代療法を行い再び寛解となった。2010年7月の定期検査のPET-CTで膵体部に集積があり、同年7月30日に腹部超音波とCTを施行。膵頭体移行部に2cmの腫瘤と尾側膵管の拡張を認めた。ERPでは以前の像とは異なり主膵管の体部での先細り狭窄があり、膵管ブラシ細胞診でClass2、8月26日信州大学でEUS-FNAを再び行い、低分化型腺癌と診断された。当院外科で外科手術(膵体尾部切除+脾摘+D2郭清)を施行。組織学的にはPb, TS2, 2.1x2.0cm, infiltrative type, pT4(脾動脈・脾静脈), CH(-), DU(-), S(+), PVsp(+), Asp, PL(-), OO(-), pPCM(-), Invasive ductal carcinoma, tub2, scirrhous type, INFb, ly2, v2, ne1, mpd(-), pN1(1/9, #3), stageIVaと診断された。脈管侵襲が認められたため定期的なTS-1の投与を行っている。悪性リンパ腫のうち癌の合併は1-3%であり、悪性リンパ腫の治療の後、癌が新たに発症する頻度は1-5%である。ただし膵原発悪性リンパ腫に関して完全寛解となった後膵癌を発症した例は認められず局所免疫能がR-CHOPで失われ発症した可能性があった。