日本消化器内視鏡学会甲信越支部

51.嚢胞成分に乏しく術前診断が困難であった分枝型IPMNの1例

山梨大学 医学部 第一内科
小林 祥司、深澤 光晴、石田 泰章、高橋 英、進藤 浩子、門倉 信、高野 伸一、佐藤 公、榎本 信幸
山梨大学 医学部 第一外科
細村 直弘、川井田 博充、板倉 淳、藤井 秀樹

症例は77歳女性。既往歴は高血圧、高脂血症、静脈血栓、陳旧性脳梗塞。高血圧で近医通院中にスクリーニング目的で施行した腹部超音波検査にて膵体部に11mm大の腫瘤を指摘され当科紹介となった。血液生化学検査では異常を認めず、腫瘍マーカーは正常であった。腹部超音波検査では、膵体部に境界明瞭で内部エコー有する類円形腫瘤を認めた。CTでは、単純で淡い高濃度の腫瘤として描出され、造影では内部の染影は乏しく、辺縁がわずかに造影された。MRIでは、T1強調像では腫瘍の一部に高信号を示す領域を認め、MRCPでは高信号は呈していないことから出血を伴う腫瘍と考えられた。ERCPを施行したところ、膵体部主膵管内に結節様の病変を認めた。粘液透瞭像、病変との交通は認めなかった。ENPDを留置して細胞診を行いClassIV、腺癌を疑う細胞を認めた。術前診断は困難であったが、ERPと細胞診結果から、膵管内より発育する充実性病変としてITPN(Intraductal tublopapillary neoplasm)由来の浸潤癌を疑い、膵体尾部切除術を施行した。切除標本のマクロ像では、膵内に11mm大の白色腫瘤を認め、腫瘤から連続して主膵管内に突出する5mm大の乳頭状隆起を認めた。組織学的には、白色腫瘤の大部分は拡張した分枝膵管内に密に増殖する乳頭状腫瘍であった。高度な異型を認め、一部は浸潤性に増殖して管状腺癌の像を呈していた(浸潤距離5mm)。免疫染色では、MUC1陽性、MUC2陰性、MUC5AC陽性であり、Pancreatobiliary type の分枝型IPMNと最終診断した。膵管内を密に増殖し、術前検査では充実性腫瘍と判断されたIPMNの1例を経験した。形態的にまれであり、若干の文献的考察を加えて報告する。