日本消化器内視鏡学会甲信越支部

50.当科における内視鏡的乳頭切除術の治療成績

新潟大学 大学院 医歯学総合研究科 消化器内科学分野
佐藤 聡史、五十嵐 聡、山本 幹、鈴木 健司、青柳 豊
新潟大学 医歯学総合病院 光学医療診療部
塩路 和彦、小林 正明、成澤 林太郎

内視鏡的乳頭切除術(EP)は十二指腸乳頭部腫瘍に対する低侵襲性治療として行われているが、出血や膵炎といった偶発症の頻度が高く、一部の専門施設においてのみ行われているのが現状と思われる。当科においては2002年に第1例を経験し、これまで17症例に対しEPを施行してきた。現時点における治療成績について報告する。症例は31歳から83歳であり、男性 16名、女性 1名。家族性大腸腺腫症の合併を2例で認めた。EPは後方斜視鏡を用いて行い、大腸用のスネアを利用し、ほとんどの症例で局注なしに切開波またはEndocut modeで切除を行った。切除後可能な限り膵管および胆管ステントを留置した。EPの適応は腺腫または腺腫内癌としているが、術前生検診断では腺腫が11例、腺腫内癌が3例、癌が3例で、最終病理診断では腺腫が9例、腺腫内癌が5例、癌が2例であった(最終病理未着1例)。切除断端は14例が陰性、2例が挫滅や標本のねじれにて評価不能であり、その内1例で遺残再発を認めた。呼吸機能が悪かったため手術は行わず再EPを施行したが完全切除できず。以後経過観察となった。この症例以外には遺残・再発を認めていない。(観察期間 2ヶ月~9年5ヶ月:平均 3年6ヶ月)。偶発症は切除後の止血に伴う穿孔が1例あり緊急手術を要した。止血鉗子にて過度に凝固を行ったことと、リウマチによる長期ステロイド内服症例であったため十二指腸筋層が脆弱であったことが原因と考えられた。後腹膜気腫も1例認めたが保存的に軽快した。少量の吐血と下血を2例認め、内視鏡による止血術を要したが輸血を必要とする症例はなかった。EP後に膵管および胆管にステント留置ができなかった症例もあるが、重篤な膵炎、胆管炎は経験していない。十二指腸乳頭部腫瘍に対するEPは正確な術前診断を行い、症例を選択すれば比較的安全に施行可能と思われる。偶発症には出血に関連するものが多く、より安全に施行すべく症例を積み重ねていきたい。