日本消化器内視鏡学会甲信越支部

47.十二指腸に潰瘍を形成した好酸球性胃腸炎の1例

諏訪赤十字病院
小林 愛子、進士 明宏、小松 健一、上條 敦、太田 裕志、武川 建二、山村 信吉、中村 智次、小口 寿夫

【症例】16歳、女性。【主訴】心窩部痛。【現病歴】2年ほど前から心窩部痛を自覚していたが、3ヶ月前から増悪したため近医を受診した。EGD施行され、深掘れの十二指腸潰瘍を認め、精査加療目的で当科紹介となった。経過中に発熱、体重減少、黒色便は認めなかった。また、アレルギーを指摘されたことはなかった。血液検査で軽度の好酸球増加(7.4%、488/μl)、IgE上昇(747IU/ml)、貧血(Hb 8.6g/dl)を認めた。血清ガストリン値の上昇はなく(58pg/ml)、腫瘍マーカーは正常範囲内であった。腹部単純CTで十二指腸の浮腫と腹水を認めた。EGD再検したところ、深掘れの多発性十二指腸潰瘍があり、胃前庭部には鳥肌状変化を認めた。尿素呼気試験でH.pylori陽性であった。潰瘍部の生検ではリンパ腫を含めた腫瘍性病変は認めず、H.pyloriによる十二指腸潰瘍と判断し、除菌療法を行った。2次除菌で除菌成功したが、EGDで潰瘍は残存しており、再生検で高度の好酸球浸潤を認め、好酸球性胃腸炎による十二指腸潰瘍と診断した。なお、MASTで食物アレルギーの存在が疑われた。プレドニゾロン20mg/日による治療を開始し、2週間後のEGDで改善を認めたため、以後4週毎に5mgずつ減量した。しかし10mg/日投与時にEGDで増悪があり、再び20mg/日に増量し、経過観察中である。【考察】好酸球性胃腸炎は10万人に1~20例という比較的稀な疾患である。全消化管に発赤、びらん、潰瘍、浮腫などが認められ得る。過去5年間の146例の症例報告のうち、十二指腸病変を来したものは52例であった。病変の内訳は、浮腫のみ8例、発赤20例、びらん8例、潰瘍6例、その他病変2例、記述なしが8例であった。進行すると狭窄、穿孔も起こし得るため、ステロイドによる迅速な治療が重要である。