日本消化器内視鏡学会甲信越支部

46.若年性ポリポーシス症候群の一家系例

新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
本田 穣、河内 裕介、小林 正明、成澤 林太郎
新潟大学医歯学総合病院 消化器内科
佐藤 祐一、横山 純二
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器・一般外科学分野
星 隆洋、青柳 豊
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野 分子病態病理学分野
矢島 和人、神田 達夫

若年性ポリポーシス症候群(juvenile polyposis syndrome:以下JPS)は非腫瘍性の若年性ポリープ(juvenile polyp:以下JP)が消化管に多発する常染色体優性遺伝疾患である。今回、我々は胃主体であるが小腸大腸にもJPを認めたJPSの母娘例を経験したので報告する。 症例は20歳代女性。近医で鉄欠乏性貧血の経過観察中、上部消化管内視鏡検査(以下EGD)で胃体部の多発性隆起性病変を指摘され前医総合病院に紹介。同院のEGDで胃に密在するJPを認め、全消化管検索目的に当科へ紹介された。来院時現症では貧血を認め、上腹部正中に柔らかい腫瘤を触知。更にTP 6.0 g/dl, Alb 3.7 g/dlと低蛋白血症を認めた。EGDでは胃前庭部から体下部小弯を中心に発赤調の表面平滑な浮腫状のポリープの集簇を認め、病理組織診断は全てJPとして矛盾しない所見であった。下部消化管内視鏡検査(以下CS)および経口カプセル内視鏡検査(以下CE)にて上部空腸、大腸にもJPを認め、胃を中心とした若年性胃腸管ポリポーシスと診断。貧血・低蛋白血症の治療目的に腹腔鏡下胃全摘術およびD1廓清を施行した。 50歳代の母親について検索を行なったところ、EGDで胃前庭部から体部に複数個のJPを認め、介在粘膜も浮腫状を呈した。CS、CEにおいても上部空腸、下部回腸、大腸にJPを認めた。さらに母方祖父、弟にも大腸ポリープの家族歴を有しており、家族内発生を認めたJPSの症例である。 JPSの病型として大腸にJPを認める若年性大腸ポリポーシス、胃、小腸、大腸に発生する若年性胃腸管ポリポーシス、胃に限局する若年性胃ポリポーシスが報告されているが、その疾患概念は完全に確立されていないのが実状である。特に小腸病変の検索を行なっている報告は少なく、CEやバルーン内視鏡の普及により今後の実態解明が期待される。