44.腹部大動脈瘤と腰椎変形により上腸間膜動脈症候群を呈した一例

症例は81歳女性。H22年9月腹痛、嘔吐、体重減少を主訴に当院内科外来を受診した。イレウスを発症していた。腹部CTを施行したところ、腰椎骨棘により約3cmの大動脈瘤が上方に押し上げられ、十二指腸水平脚が上腸間膜動脈と大動脈瘤の間に挟まれ、閉塞を来していた。上腸間膜動脈症候群と診断し、絶食補液、胃管挿入などの治療を行った。食事開始後イレウスを再発し、6回食にする、食後に左側臥位をとるなどの保存的加療を行い改善した。以後内科外来通院で経過を見ていたが、H23年5月イレウスを再発した。半年で3回イレウスを繰り返しており、認知症の進行により厳密な食事療法が困難であるため、外科的治療について検討する目的に外科に紹介された。大動脈瘤に対して人工血管置換術も検討されたが、大動脈瘤は小さく、腰椎骨棘が関係していることや高齢であることを考慮し、十二指腸空腸吻合、空腸空腸吻合術を行った。その後の経過は良好である。腹部大動脈瘤に関係した上腸間膜動脈症候群について文献的考察を含め報告する。