日本消化器内視鏡学会甲信越支部

42.皮膚筋炎に合併した消化管悪性腫瘍の3例

信州大学 医学部 附属病院 消化器外科
得丸 重夫、小出 直彦、石曽根 聡、鈴木 彰、関野 康、唐澤 文寿、竹内 大輔、奥村 征大、宮川 眞一

【はじめに】皮膚筋炎は悪性腫瘍が合併することが広く知られている.2004年から2011年の8年間に皮膚筋炎に合併した消化管悪性腫瘍を3例経験したので報告する.【症例1】78歳,女性.H16年6月頃より体幹、両上肢、顔面に痒みを伴った紅斑が出現し,皮膚筋炎と診断された.同年8月にEGDで胃体部前壁に0-IIc+IIIの早期胃癌を認め,胃全摘出術を施行した.病理学的所見ではpor1,T1b(sm2) N0,M0 ,stage IAであった.【症例2】78歳,男性.H17年10月頃より両下肢の痒みを伴った紅斑が出現し,全身に広がった.筋症状がなく非典型的であったが,自己抗体陽性でステロイド,光線療法など施行されたが改善せず,悪性腫瘍に合併した皮膚筋炎が疑われた.悪性腫瘍の有無を精査し,H18年6月にEGDで体上部後壁に0-IIcの早期胃癌を認め,胃全摘出術を施行した.病理学的所見ではtub2 ,T1b(sm2), N0,M0 stage IAであった.【症例3】58歳,男性.H22年7月に左手指関節の発赤と掻痒感を自覚した.徐々に広がり,顔面,前胸部にまで達し,皮膚筋炎と診断された.同年9月にCSで直腸Rs部に1型の直腸癌を指摘され,低位前方切除術を施行した.病理学的所見ではtub1,SM ,N0,M0 stageIであった.症例3は術後に筋炎症状が進行し,周術期にステロイド投与が必要となったが,3例とも術後に皮膚症状の改善が見られた.癌の再発は認めていない.【考察】皮膚筋炎に悪性腫瘍の合併する頻度は15-30%で胃癌の合併頻度が最も高いと報告されている.多くの症例で皮膚症状が出現してから1年以内に癌の診断がなされている.腫瘍摘出後に症状が改善することが多く報告されており,悪性腫瘍を合併した皮膚筋炎は予後不良とされている.自験例では,皮膚症状から悪性腫瘍を疑われ,腫瘍の摘出によって症状は緩和された典型的な経過であった.悪性腫瘍を早期に発見し,根治切除を行うことで症状の緩和と予後の改善に寄与すると考えられた.しかし,術後に間質性肺炎の増悪,呼吸筋,嚥下機能の低下,ステロイド投与による免疫力の低下など周術期合併症の発生リスクは高く,周術期管理には十分な注意を要すると考えられた.