日本消化器内視鏡学会甲信越支部

40.短期間に出血を繰り返し、内視鏡的結紮術が止血に有用であった大腸憩室出血の3例

国立病院機構 信州上田医療センター 消化器科
金井 圭太、柴田 壮一郎、鶴田 史、藤森 一也、滋野 俊、吉澤 要

大腸憩室出血に対する内視鏡的結紮術は、食道静脈瘤結紮術用器具を用い、吸引操作で出血憩室をキャップ内に内翻させ、その基部をOバンドにて結紮し止血を図る方法である。症例1.80歳、男性。平成22年3月、5月に血便にて他院へ入院したが、出血源は不明であった。同年8月、血便にて当院へ入院、大腸内視鏡検査で下行結腸の憩室内に露出血管を認め内視鏡的結紮術で止血した。症例2.83歳、男性。当院入院前の2病院で、8か月間に計5回の血便が出現、大腸憩室出血が疑われたが出血源不明のためその都度バリウム充填法が施行された。当院転院7日目に血便が出現、大腸内視鏡検査で上行結腸の憩室から活動性出血を認め内視鏡的結紮術で止血した。症例3.84歳、男性。陳旧性心筋梗塞で抗血小板剤を内服していた。平成23年4月、5月に血便にて他院へ入院、保存的治療で血便は治まった。平成23年6月、再度の血便にて当院へ入院した。大腸内視鏡検査で盲腸の憩室より活動性出血を認め、クリップ法にて止血処置を行ったが、翌日にも血便が出現、内視鏡検査で前日クリップ止血を行った同じ憩室からの出血を認めた。異物鉗子でクリップを除去し、内視鏡的結紮術を行った。結紮術には、オリンパス社製大腸内視鏡スコープPCF Q260JIに住友ベークライト社製EVLデバイスを装着して使用した。3例とも、穿孔、腹膜炎等の偶発症はなく、その後出血は見られていない。内視鏡的結紮術は、2000年にWitteらが憩室を含む大腸出血性疾患への応用を報告しているが、これまで本邦では一般的ではなかった。最近、結紮術は大腸憩室出血の止血法として従来のバリウム充填法やクリップ法に勝る止血成績が報告され、今後大腸憩室出血に対する有力な止血法の一つとなる可能性が考えられた。また、結紮術は出血憩室を消滅させ、将来同一憩室からの出血を防止でき、内視鏡的憩室摘出術(Endoscopic diverticulectomy)としての効果も併せ持つと考えられた。