日本消化器内視鏡学会甲信越支部

39.大腸内視鏡下のクリッピングにより大腸穿孔をきたした2例

燕労災病院 外科
森岡 伸浩、沢津橋 孝拓、清水 孝王、中塚 英樹、宮下 薫

大腸憩室出血に対するクリップ止血後と病変に対するマーキング目的のクリッピング後に、大腸穿孔をきたした2例を経験した。症例1:77歳、男性。2011年5月突然、下血を認めたため当院救急外来を受診した。緊急大腸内視鏡検査で上行結腸憩室からの出血と診断し、クリップ止血術を行った。安静目的に当院内科に入院した。入院後腹痛が出現し、CT検査で腹腔内にFree airを認めた。症例2:58歳、男性。便潜血反応陽性の精査目的に大腸内視鏡検査を施行した。下行結腸に狭窄を認めたため、生検とクリッピングを施行した。その後のクリップの位置確認のためレントゲン検査を施行し、横隔膜下にFree airを認めた。CT検査で後腹膜にairを認めた。それぞれ大腸穿孔と診断した。2例ともCT検査で後腹膜にFree airを認めたが、腹水は認めなかった。腹部症状の悪化なく、全身状態も安定していたため保存的治療を行った。それぞれ保存的治療で軽快した。経過よりクリッピングによる大腸穿孔と診断した。内視鏡的クリッピングは日常よく使用する手技の一つである。頻度は低いものの偶発症も報告されている。大腸内視鏡下のクリッピンクによる大腸穿孔の稀な偶発症を経験したので報告する。