日本消化器内視鏡学会甲信越支部

38.クローン病に合併した自己免疫性膵炎にInfliximabが著効した1例

山梨県立中央病院 消化器内科
岸 宏樹、津久井 雄也、小嶋 裕一郎、川上 智、久野 徹、深澤 佳満、岩本 史光、廣瀬 純穂、細田 健司、鈴木 洋司、星野 祐治、廣瀬 雄一、望月 仁、小俣 政男
山梨県立中央病院 病理
小山 敏雄

症例は39歳男性、1991年3月に粘血便、下痢便が出現。1992年3月に当院を受診し、小腸大腸型クローン病と診断。寛解再燃を繰り返し、2002年8月にInfliximab(IFX)を導入。投与後に症状は改善するも、腸管の狭窄が進行し、腸閉塞となり、腸管切除、人工肛門造設となった。その後IFXは休薬していた。2006年6月に血便、排便回数の増加があり、IFXを再開・維持投与し、症状は改善していた。2011年1月上旬、発熱、心窩部痛を主訴に来院。血液検査でAmy 167 IU/L、Lipa 127 IU/L、CRP 18.1 mg/dLを認め、造影CT検査にて膵腫大、膵周囲の脂肪織濃度の上昇があり、膵炎を疑い入院となった。絶食、ナファモスタットメシル酸塩の投与を開始したが、第16病日まで改善しなかった。感染性疾患の合併を危惧し、IFXの投与は延期していた。膵炎の明らかな誘引がなくIgG4陰性と画像所見・膵生検所見より自己免疫性膵炎(Type2)と診断し、感染兆候に乏しいことから第17病日にIFXを投与したところ、第18病日より腹部症状、血液検査ともに改善傾向となり、画像所見も膵腫大は改善した。炎症性腸疾患に合併する、自己免疫性膵炎はIgG4が陰性であることが多く、欧米に多いType2であることが報告されている。Type2は原疾患のコントロールにより軽快する症例が多いといわれており、これまでに5-ASA製剤、成分栄養療法、ステロイドでの原疾患の治療で膵炎が改善した報告はあるが、IFXで膵炎が改善した報告はなかった。今回、クローン病に合併した自己免疫性膵炎にIFXが著効した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。