日本消化器内視鏡学会甲信越支部

37.消化管出血を契機にダブルバルーン内視鏡にて診断された小腸神経内分泌腫瘍(NET)の一例

山梨大学 医学部 第一内科
松田 秀哉、辰巳 明久、山口 達也、末木 良太、植竹 智義、大塚 博之、大高 雅彦、佐藤 公、榎本 信幸
山梨大学 医学部 第一外科
土屋 雅人、須藤 誠、森 義之、飯野 弥
山梨大学 医学部 人体病理学
望月 邦夫

症例は53歳、男性。主訴は血便、既往歴:糖尿病、高脂血症。2011年7月に突然の血便を認め、近医受診し、血圧50mmHgとショック状態で近医に緊急入院となった。上部消化管内視鏡検査では十二指腸潰瘍瘢痕を認めたがほかに特記すべき所見はなかった。下部消化管内視鏡検査では大腸内に出血源となりうる病変はみられなかったが、終末回腸に鮮血を認め小腸出血を疑い当科紹介となった。カプセル内視鏡にて回腸に潰瘍性病変を認めたため、ダブルバルーン内視鏡検査(DBE)を実施。経肛門的DBEにて深部回腸に15mm大の2型潰瘍性病変を認めた。またその病変の肛門側約10cmに頂部がわずかに陥凹した6mmほどの黄色調粘膜下腫瘍様隆起を認め、さらにその肛門側約10cmに同様の粘膜下腫瘍様隆起を認めた。生検組織による病理組織診断はいずれも大小の充実性胞巣、索状構造、腺腔構造を認め、免疫染色でchromogranin A(+), synaptophysin(+), NCAM(focal +), MIB1-index(1%)であり、G1相当の神経内分泌腫瘍neuroendocrine tumor(NET)の所見であった。造影CTにて回腸に造影効果の強い腫瘤を3個認め、明らかなリンパ節転移、遠隔転移は見られなかった。以上より回腸NET,Grade G1, T2M0N0 StageIIと診断した。当院消化器外科にて小腸部分切除、リンパ節郭清が実施された。摘出標本は59cmの回腸で、15mm、9mm、7mmの3個の隆起性病変を認めた。病理組織学的検査では、MIB-1index(1-2%)で、G1相当のNETと診断。いずれもリンパ管侵襲、脈管侵襲を認め、腸間膜リンパ節に転移を認めた。小腸NETは10mm以下であっても、リンパ節転移陽性率の報告は平均44%(5-85%)と高率であり早期発見が望まれる。DBEにて術前診断が得られた小腸NETを経験した。若干の文献的考察をふまえ報告する。