日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34.小腸潰瘍の一例

信州大学 医学部附属病院 消化器内科
小林 聡、大工原 誠一、岡村 卓磨、野沢 祐一、中村 真一郎、奥原 禎久、山田 重徳、岩谷 勇吾、横沢 秀一、菅 智明、田中 榮司
信州大学 医学部附属病院 内視鏡センター
新倉 則和

症例は50代男性。既往に高血圧,高脂血症がある。家族歴に特記事項なし。高血圧のため近医に通院中であったが貧血症状が出現し、血液検査にてHb 8.1g/dlと貧血を指摘された。尚、血便や黒色便は自覚していなかった。原因精査のために前医を紹介されたが、上下部内視鏡検査、造影CT検査や骨髄検査では異常を指摘されなかった。そのため小腸精査目的に当科に紹介となった。カプセル内視鏡で回腸に輪状潰瘍を認めたため経肛門的ダブルバルーン内視鏡検査を施行したところ、回腸輪状潰瘍と軽度の狭小化を認めた。生検では特異的な所見無く、狭窄症状も無いため経過観察とした。貧血は徐々に改善したが次第に腹痛や水様便を認めるようになり,小腸内視鏡検査の2ヶ月後にイレウスを発症し、イレウス管造影にて同部位の狭窄によるイレウスと診断した。経肛門的ダブルバルーン内視鏡下にバルーン拡張術を施行したところ、術中に穿孔を生じたため小腸部分切除術を施行した。病理学的には肉芽腫などの特徴的な所見は無く、全層に好中球浸潤を認め粘膜下組織を中心に軽度の線維化を認めるのみであり、本症例では高血圧、高脂血症がありCTにて動脈硬化も目立つことから虚血に伴う小腸潰瘍が最も疑われた。小腸潰瘍の鑑別としてはクローン病,腸管ベーチェット病,腸結核,薬剤性小腸潰瘍症,非特異性多発性小腸潰瘍症,虚血性腸炎があり、それらの鑑別について文献的考察を加え報告する。