日本消化器内視鏡学会甲信越支部

23.胃軸捻転症を合併した食道裂孔ヘルニアの1例

新潟県立十日町病院 外科
齋藤 賢将、福成 博幸、中嶌 雄高、高橋 英徳、設楽 兼司、林 哲二

今回われわれは胃軸捻転症を合併した食道裂孔ヘルニアに対して腹腔鏡下修復固定術を施行し良好な結果を得たので報告する。症例は88歳女性。心窩部痛と腹部膨満を主訴に当院受診。腹部CTにて著明な胃拡張と穹隆部および前庭部の縦隔内への脱出を認めた。経鼻胃管を挿入し胃減圧を行い上部消化管造影を施行すると、胃前庭部は縦隔内に脱出し造影剤の十二指腸への流出は認めなかった。また、胃体部の前方への捻転を認めた。以上の所見より、胃穹隆部および前庭部の脱出により胃軸捻転症をきたした食道裂孔ヘルニアと診断した。上部消化管内視鏡検査を施行すると胃の屈曲と胃体部に散在する胃潰瘍を認め、虚血性変化が疑われた。胃の屈曲が強く十二指腸内へのscope挿入は困難で、内視鏡的整復不能であったため、腹腔鏡下整復術の方針とした。胃穹隆部および前庭部は牽引により容易に腹腔内に還納可能であった。ヘルニア門を縫縮し、横隔膜右脚と小弯および左脚と穹隆部を非吸収糸でそれぞれ縫合固定した。術後経過は良好で再発をみとめていない。文献的考察を加え報告する。