「諸言」食道および胃の平滑筋腫は球形あるいは類球形を示すものが多く認められる。今回、食道胃接合部に発生した馬蹄型および螺旋型の平滑筋腫の2例を経験したので報告する。「症例1」58歳、男性。3年前食事のつかえ感を自覚し、EGDで食道胃接合部に22 mmの粘膜下腫瘍を指摘された。その後経過観察にて増大傾向を認めたため、当科紹介となった。EGDで噴門小彎に粘膜下腫瘍を認め、EUSでは27 x 9 mm、胃壁第4層由来の腫瘍と考えられた。CTでは食道胃接合部右壁に25 mmの腫瘍を認めた。食道胃接合部粘膜下腫瘍の診断で手術を施行した。腫瘍は馬蹄型を呈し、噴門小彎を中心として、前壁、後壁へと噴門を取り巻くように存在した。腫瘍直上(噴門小彎)の食道外膜を切開して腫瘍に到達し、腫瘍被膜および食道胃接合部の粘膜を損傷しないように噴門小彎、前壁から後壁へと腫瘍の核出術を行った。切除標本は白色の55 x 10 x 10 mm、馬蹄型の腫瘍であった。病理検査でKIT陰性、CD34陰性、α-SMA陽性の平滑筋腫の診断であった。「症例2」36歳、女性。食事のつかえ感を自覚し、EGDで下部食道から噴門にかけて立ち上がりなだらかな粘膜下腫瘍を認め、下部食道では右後壁側、噴門では前壁側に存在し、腫瘍は螺旋型を呈していると疑われた。EUSで食道壁第2層と連続する低エコー性腫瘤を認めた。CTで胸部下部食道から噴門にかけて長径55 mmの腫瘍を認め、PETで腫瘍に一致して淡い集積を認めた(SUV max 5.5)。食道胃接合部粘膜下腫瘍の診断で手術を施行した。手術では、腫瘍の上縁は横隔膜より頭側に存在し、食道裂孔より横隔膜を切開し、胸部下部食道の受動を行った。腫瘍の全長は約8 cmで、胸部下部食道右壁から後壁、そして噴門左前壁に存在し、螺旋型を呈していた。下部食道噴門側胃切除、縦隔内食道胃管吻合術を施行した。病理検査でKIT陰性、α-SMA陽性の平滑筋腫の診断であった。「結語」食道胃接合部をとりまく馬蹄型の腫瘍である症例1では核出術が可能であったが、症例2では胸部下部食道から噴門にかけて存在した螺旋型腫瘍であり、核出術は困難あった。