日本消化器内視鏡学会甲信越支部

21.術後4年に癌性髄膜炎を発症した食道胃接合部腺癌の1例

諏訪赤十字病院 消化器科
溜田 茂仁、進士 明宏、上條 敦、小松 健一、太田 裕志、武川 建二、山村 信吉
信州大学 医学部付属病院 消化器外科
小出 直彦
信州大学 医学部保健学科 検査技術科学専攻 生体情報検査学講座
太田 浩良
諏訪赤十字病院 病理部
中村 智次

症例は46歳、男性。4年前に食道胃接合部癌に対して、外科手術を受け、AeGLt, sig, 80×60mm, Type 3, pT2pN4M0, pStage 4a(食道癌取扱い規約)、Siewert I型と診断を受けた。術後、FP療法を2クール施行し、残存腫瘍は認められなかったが、CEAは正常化せず、若年であることを考慮し、追加の化学療法を続けていた。CEAは一旦正常化したが、術後2年7ヵ月後より上昇し始め、PETで、右側頭葉の脳転移再発が明らかとなり、術後約3年に脳外科で摘出手術を受けた。術後、化学療法を再開し、CEAも正常化していたが、術後3年7ヵ月後に再上昇が認められ、3カ所脳転移再発が認められ、γナイフによる治療を受けた。画像上改善が見られていたが、約1ヵ月前より、腰痛が出現し、次第に右手の脱力や歩行困難が出現したため、入院となった。項部硬直所見があり、髄液細胞診で、腫瘍細胞を認め、癌性髄膜炎と診断した。髄注療法などを検討したが、希望がなくBest supportive Careとした。入院後約3週で永眠された。癌性髄膜炎は、肺癌、乳癌などでの報告例は比較的多いが食道胃接合部領域では稀であり、文献的考察を含め報告する。