日本消化器内視鏡学会甲信越支部

19.前回EGDから5ヶ月間で発生し急速に進行したBarrett食道由来の未分化癌の1例

佐久総合病院
岸埜 高明、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、高橋 亜紀子、篠原 智明、國枝 献治

症例は60歳代、男性。2010年に当院検診EGDにてC 20、M 40のSSBEとGERD Bを指摘された。NBI拡大内視鏡にてSSBE内部を観察したが腫瘍性病変は認めなかった。胸焼けにて近医を受診し、EGDにて下部食道に深掘れ潰瘍を指摘されたが生検で肉芽組織と診断された。その後に別の近医を受診し、腹部エコーにて腹部リンパ節の腫大、多発肝腫瘍を認めたため、当科紹介となった。初回EGDから5ヶ月後の当院EGDでは接合部を中心に前壁から右壁にかけて立ち上がり明瞭な周堤を有する約2/3周性の不整形潰瘍性病変を認めた。前回EGDと対比すると病変は前壁のSSBEを中心に発生したものと考えられたが、前回EGDを見直しても病変は指摘できなかった。病変の口側は扁平上皮、肛門側は円柱上皮と接し、周堤部は扁平上皮側も円柱上皮側も表面に構造や血管の不整はなく、扁平上皮側はヨード散布にても濃染することから粘膜内に腫瘍性変化はないと判断した。病変は送気にて伸展し、狭窄も認めなかった。軟らかく、急速に進行した2型の食道癌であり、組織型は内分泌細胞癌などの特殊型を考え、潰瘍の口側辺縁よりボーリング生検を5個施行した。HE染色では中型から大型の異型細胞が充実性に増殖し、免疫染色ではN-CAM、chromogranin A、synaptophysin 、S100 、CD3、CD20、CD34など全て陰性であった。食道造影では病変の伸展は良好で狭窄やバリウムの通過障害は認めず。CTでは多発リンパ節転移と多発肝転移・肺転移を認めた。食道未分化癌、2型、T4N2M1 stage IVbと診断した。治療は小細胞癌に準じて、1st line CPT-11+CDDP、2nd line weekly PTXを行ったがともに1コース後でPDと判断した。治療開始から2ヶ月後に永眠された。食道未分化癌は比較的まれな疾患であり、予後不良な疾患として知られている。本例はSSBEを背景として発生した未分化癌で約5ヶ月の間に病変が発生し、急速に進行したものと考えられた。