日本消化器内視鏡学会甲信越支部

16.奇静脈からのB-RTOを行った食道静脈瘤・肝性脳症の一例

新潟市民病院 消化器内科
和栗 暢生、林 雅博、薛 徹、佐藤 宗広、相場 恒男、米山 靖、古川 浩一、杉村 一仁、五十嵐 健太郎
新潟大学 大学院 消化器内科学分野
横尾 健
新潟市民病院 消化器内科、新潟大学 大学院 消化器内科学分野
濱 勇

【緒言】胃静脈瘤に対するバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)は本邦ではすでに確立した治療であるが、門脈大循環シャントを原因とする肝性脳症の治療としてもその有用性が報告されてきている。今回我々は傍食道~奇静脈シャントを責任血管とする食道静脈瘤・肝性脳症に対してB-RTOを施行したので報告する。【症例】60歳代の女性。昏睡にて救急搬送され、CTにて傍食道~奇静脈に至る大きな門脈大循環シャントを有する肝硬変を認め、肝性昏睡と診断された。人工呼吸管理をはじめ、保存的療法により45日で退院可能となった。F2 Cb Ls RC2の食道静脈瘤が認められたが、傍食道静脈が非常に太いこと、肝予備能が低いことから、予防的治療はためらわれ、経過観察となった。その後、外来でなんとか日常生活を送っていたが、若干の肝予備能改善が見られたため、食道静脈瘤増悪および肝性脳症に対してB-RTOを行う目的で2回目の入院となった。術前に内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を行ってB-RTO施行した。右大腿静脈アプローチで奇静脈にバルーンカテーテルを挿入。脊椎近傍の静脈を超えて目的のシャント内に選択的挿入してB-RTOを施行し、門脈圧上昇緩和目的に部分脾動脈塞栓術(PSE)も併施したところ、目的のシャントは良好な血栓化がえられた。術後胸腹水貯留が見られたが、保存的に改善して術後19日で退院。術後血中アンモニアは正常化し、肝予備能も改善傾向となった。食道静脈瘤は残存したため、EVLとアルゴンプラズマ凝固療法による追加の内視鏡的地固め療法を行って消失した。【考察】奇静脈系のB-RTOは副排血路も多く、手技的にはかなり困難で、その報告は非常に少ない。奇静脈系paraesophageal veinの硬化の長期的な意義は今後の検討課題となるが、本例の画像と経過を呈示して、多くの議論の場としたい。