日本消化器内視鏡学会甲信越支部

15.茶漉しを用いたアミノレバンEN調製による服薬アドヒアランス向上のための試み

千曲中央病院 内科
宮林 千春、大西 雅彦、窪田 芳樹

【はじめに】肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善のために肝不全用経口栄養剤(アミノレバンEN:以下EN)は有効であるが、主成分であるロイシン、イソロイシン、バリンの3種類の分岐鎖アミノ酸は、特有の苦み、匂いをもつため、飲み心地が悪い。今回当院におけるENの処方および服薬状況を評価し、茶漉しを用いたEN調製により服薬アドヒアランスの向上を試みたので報告する。【対象および方法】1) 2010年4月~2011年3月に新規処方を行った36例のENの処方および服薬状況を調査し、2006年3月~9月に行った調査(18例)と比較検討した。2) 2010年4月~2011年3月に新規処方を行った36例に対し、管理栄養士および薬剤師により茶漉しを用いたEN調製法を指導した。すなわち通常に調製したENを茶漉しで漉し、さらにスプーンの背を使って裏ごしをするようにした。【結果】当院におけるEN処方状況は2006、2011年次とも2包が最も多くそれぞれ8/18例(44%)、19/36例(53%)であった。Late Evening Snack (LES)で処方していたのは約半数であった。他の処方をしている症例はLESに移行中である。新規処方を行った36例のうち1年半以内の死亡は8例 (22.2%)、生存28例 (77.8%) であった。EN服薬脱落は2例 (5.6%)、継続中は26例 (72.2%)であった。服薬アドヒアランスは26/36例 (72.2 %:ITT) 、26/28例 (92.9 %:PP)であった。【考案】EN用フレーバーは、五基本味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)のうち甘味、酸味、うま味があり、これを加えることにより服薬継続の難しさを改善している。茶漉しを用いたEN調製では物理的刺激(舌触り:つぶつぶ感、柔らかさ、硬さ)が緩和され、飲みにくさが改善されたものと考えられる。【結論】当院におけるEN処方状況は2包が最も多く、LESで服薬していたのは約半数であった。また、茶漉しを用いたEN調製による服薬アドヒアランスは良好であった。