日本消化器内視鏡学会甲信越支部

13.C型慢性肝炎ウイルス学的著効(SVR)後に発症した肝内胆管癌の2例

山梨大学 医学部 第一内科
中岫 奈津子、中山 康弘、早川 宏、辰巳 明久、小松 信俊、三浦 美香、進藤 邦明、雨宮 史武、井上 泰輔、前川 伸哉、坂本 穣、榎本 信幸

【緒言】胆管細胞癌(IHC)は原発性肝がんの約5%と比較的まれでありC型慢性肝炎(CH-C)はそのリスクファクターとして知られているが、ウイルス学的著効(SVR)後の発症に関する報告は少ない。IFN治療後SVRとなった患者に発症したIHC 2例を報告する。【症例1】55歳男性。2000年にCH-C(2a型低ウイルス量)と診断されIFN導入目的に当科受診し、IFNαの24週投与でSVRとなった。2002年以降自己判断で通院中断され、2007年に持続する臍部および背部痛で近医から再紹介。CTで肝S5に周囲がわずかに濃染する約10cmの腫瘍を認め、同時に大動脈周囲のリンパ節腫大、右Th10レベルの胸膜転移を認めた。造影効果と腫瘍マーカーから混合型肝癌(HCC+IHC)と診断。Low dose FP療法の後GEM単独療法、GEM+TS1併用療法施行するも効果なく、発症後約6カ月で永眠された。【症例2】74歳男性。1993年にCH-C(2a型低ウイルス量)を指摘され2006年5月IFN治療目的に当科受診。IFNαの24週治療でSVRとなった。その後も当科で半年に1回の腹部エコーを継続したが2011年2月にS8 30mmの肝腫瘍と20mmの肝門部リンパ節腫大を認め同月末に造影CTを撮るも、肝腫瘍は60mmに急速増大すると同時に、娘結節、多発リンパ節転移、多発肺転移、骨転移を認めた。エコー下肝腫瘍生検施行し免疫染色にて、hepatocyte陰性、CAM5.2陽性、CK19陽性で低分化型肝内胆管癌と診断しGEM+TS1併用療法を施行。しかし肝内病変/肺野病変は増大し癌性リンパ管症を生じ、発症後約2か月で永眠された。【考察】SVR後のIHC発症の文献的報告は数例のみ。SVRから発癌までの期間は10か月から13年で、当科症例もSVR後約5年であった。SVR後のHCC症例と比べると、IHC症例はより進行が速く予後不良である傾向を認めた。【結語】CH-CはHCC同様IHCのリスクファクターでもありSVR後も注意深い観察を要す。特にIHCはより進展が急速である可能性があり早急な対応が望ましいと考える。