日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.BCG膀胱内注入による肉芽腫性肝炎の1例

新潟県立がんセンター新潟病院 内科
栗田 聡、加藤 俊幸、冨永 顕太郎、佐々木 俊哉、船越 和博、本山 展隆

肉芽腫性肝炎の原因としては、結核、サルコイドーシス、薬剤、PBCなどがある。

症例は60歳台、男性。2011年8月検診で尿潜血陽性となり、10月膀胱癌TaN0M0病期I期と診断された。11月と2011年1月の2回TUR-BTを施行し、再発予防のために2月からはBCGの膀胱内注入を週1回投与で開始された。4月の8回目投与後に発熱し、翌日AST 459、ALT 231、ALP 564、rGTP 215、CRP 8.2の肝障害を指摘され、内科紹介となった。薬剤による肉芽腫性肝炎が疑われ、肝生検のため入院した。入院時はWBC 4,800、EOS 1%、AST 108、ALT 122、LDH 265、ALP 1380、TB 0.8、rGTP 305、CRP 0.9、ESR 18mm/hr、IgG 896、IgM 65、ACE 12.6、肝炎ウイルスマーカー陰性、ANA陰性、AMA陰性、CMV-IgM陰性であった。肝CTとUS、胸部レ線写真では異常なく、胃液中の結核菌PCR法は陰性。第9病日に採取した肝生検組織でグリンソン鞘から一部小葉にかけて大小不同の非乾酪壊死性肉芽腫を認めた。BCG播種性感染ではなく、薬剤過敏反応による肉芽腫性肝炎と診断した。抗結核剤を投与することなく胆道系酵素は徐々に低下し、3か月後には正常化した。

黒色腫などへのBCG局注だけでなく、膀胱癌に対するBCG膀胱内注入後の肝障害では、BCG播種や薬剤性肉芽腫性肝炎を疑い、積極的な肝生検診断が必要である。