日本消化器内視鏡学会甲信越支部

9.十二指腸乳頭部原発腺内分泌細胞癌の一切除例

信州大学 医学部附属病院 消化器内科
丸山 雅史、渡辺 貴之、丸山 真弘、伊藤 哲也、米田 傑、村木 崇、田中 榮司
信州大学 医学部付属病院 内視鏡センター
新倉 則和
信州大学 医学部付属病院 消化器外科
横山 隆秀
信州大学 医学部付属病院 放射線科
山田 哲、黒住 明子、黒住 昌弘
信州大学 医学部付属病院 臨床検査部
岩谷 舞、吉澤 明彦

症例は70歳代 女性. 2011年1月より食欲不振を自覚, 2月に39℃以上の高熱を繰り返すようになり近医を受診, 乳頭部癌による胆管炎の診断にて精査加療目的に当科へ転院となった. CTでは胆管と膵管はともに拡張し, 十二指腸乳頭部は腫大していた. 多時相造影CTにて腫大した乳頭部は膵組織よりも遅れて濃染され, 乳頭内で造影パターンに差異は同定できなかった. MRIでは同病変はT1WIにて等信号, T2WIにてまだら状に軽度高信号, 拡散強調像では高信号を呈し, dynamic studyにて内部に早期動脈相にて濃染され, 平行相にてwash outされる領域を認めた. 内視鏡所見では乳頭は腫大し, びらんを形成していた. EUSでは乳頭内部は不均一な低エコー腫瘤として描出され, 内部に境界不明瞭な低エコー領域が確認された. ERCPでは胆管, 膵管の末端は不整像を呈し, 蠕動を確認できなかった. 胆管IDUSでは下部胆管に内側低エコーの不整像を認め, 十二指腸筋層は保たれているものの一部膵臓側へ圧排を認め同部の十二指腸側に低エコー領域を認めた. EST後に内視鏡的乳頭部生検を施行したところ高分化型腺癌を認め、dynamic MRI, EUS, IDUS所見から腺癌に神経内分泌腫腫瘍が混在している可能性のある非露出型乳頭部癌と診断し, 4月に膵頭十二指腸切除術を施行した. 組織学的に同病変は高分化型腺癌とNeuroendocrine tumor(NET) G2が混在した腫瘍であり両組織型には移行像が認められた. 病変の主座は乳頭部共通管から下部胆管であり, 腺癌成分が乳頭部主膵管にも進展を, また深部ではNET成分がわずかに十二指腸筋層まで浸潤を認めていた. 最終診断はmixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC) , 15x7x30mm, stageII , pT2N0M0であった. 術前に腫瘤内の異なる組織構成が認識できたこと, また十二指腸乳頭部原発腺内分泌細胞癌は稀であり貴重な症例と考え, 画像・病理所見を検討し報告する.