日本消化器内視鏡学会甲信越支部

8.胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)の1例

山梨大学 医学部 第一外科
細村 直弘、松田 政徳、雨宮 秀武、大菊 正人、川井田博充、河野 寛、板倉 淳、藤井 秀樹

症例は61歳、女性。3年前に上腹部痛のため他院で入院精査施行したが原因不明であった。今回、再び腹痛のため近医を受診し、胆管結石の排石後と診断し、胆嚢摘出術が施行された。術後約2ヵ月目に発熱と腹部違和感で手術を施行した病院を再診し、肝胆道系酵素の上昇と炎症反応の上昇を認めた。入院精査により粘液産生胆管腫瘍が疑われたため、当院転院となった。CTで左肝内胆管の拡張著明で、左肝管から総肝管に壁肥厚と早期造影効果を認めた。ERCPで主乳頭の開大や粘液の排出はなかったが総胆管内の透亮像をバルーンでクリーニングすると粘液の排出を認めた。総胆管から肝内胆管に拡張あり、左右分岐部から左肝管のB4、B2+3分岐部に粘液による透亮像を認めた。IDUSではB3に乳頭状隆起を認め、連続するように上部胆管まで壁肥厚を認めた。胆道鏡ではBlからBsにかけて毛細血管を伴う白色低乳頭状の隆起を認め、前後区域分岐部まで及んでいたが、前後区域分岐部胆管起始部の粘膜は正常であった。胆汁細胞診でClassIVを認めた。以上より肝内胆管癌(IPNB)肝内発育型T1N0M0 stageI(胆道癌取り扱い規約 B3BlBrBs T1(S0)N0H0P0M(-) stage I)と診断し、前後区域枝分岐部まで切除範囲とすれば切除可能と考え、左肝切除+尾状葉切除+肝外胆管切除+胆道再検術を施行した。病理検査所見ではIntraductal papillary neoplasm(IPN) with high-grade intraepithelial neoplasiaの診断であった。免疫染色ではMUC1(-), MUC2(+), MUC5AC(+), MUC6(+, a few positive cells)で、intestinal typeと考えられた。膵のIPMNと類似の特徴と形態を持つ胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)という疾患概念が提唱されている。最近この呼称が浸透しつつあるがいまだ症例数が膵のIPMNと較べて少ないため臨床的特徴に不明な点が多く、若干の文献的考察を加えて報告する。