日本消化器内視鏡学会甲信越支部

7.胆管異型上皮を経時的に拡大内視鏡観察した1例

信州大学 医学部附属病院 消化器内科
丸山 真弘、渡邊 貴之、伊藤 哲也、米田 傑、丸山 雅史、村木 崇、浜野 英明、田中 榮司
信州大学 医学部附属病院 内視鏡センター
新倉 則和
信州大学医学部保健学科 検査技術学専攻 生体情報検査学講座
太田 浩良

症例は50歳代の女性。20歳代に胆管十二指腸瘻形成術・胆嚢摘出術(詳細不明)の既往がある。胆管結石による急性胆管炎に対して、前医で内視鏡的乳頭括約筋切開術後に結石除去が試みられたが、最大結石径3cm大の積み上げ結石のため除去困難と判断され、ENBDとし体外衝撃波結石破砕術(ESWL)施行目的に当科紹介となった。胆管造影にて膵胆管合流異常症(胆管十二指腸瘻形成術および胆嚢摘出後)に合併した胆管結石と診断し、同時に肝門部に乳頭状隆起性病変を認めたため、胆管結石の破砕・除去後に同病変を精査することとした。ESWLを3回施行したが結石破砕は不良であったため、胆管十二指腸瘻から直視鏡(OLYMPUS GIF-Q260J)を挿入し、Holmium YAG レーザーを用いて直視下に結石を破砕した。砕石は1時間で終了とし、2期的に偶発症なく切石できた。切石翌日に、肝門部乳頭状隆起に対し直視鏡(OLYMPUS GIF-H260Z)にて内視鏡観察後、胆管生検を行ったが高度の炎症細胞浸潤を伴う異型上皮の範疇であり悪性腫瘍を疑う所見は認めなかった。現在、胆管切除は行わず経過観察中である。胆管異型上皮の病理組織学的診断として、炎症性異型とBiliary intraepithelial neoplasia(BilIN)との鑑別は容易ではない。今回、胆管結石完全除去翌日、3か月後、9か月後に、肝外胆管に対しNBI拡大観察を併用した内視鏡観察および生検を行い、経時的変化を観察し得たので、胆管異型上皮に対する病理組織学的所見とNBI拡大観察を含めた内視鏡所見を中心に報告する。