日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.デノシンに抵抗し、 ホスカビルが著効したサイトメガロウイルス感染を伴う潰瘍性大腸炎再燃の1例

長野県立須坂病院
坂本 広登、笹澤 裕樹、林 幸治、樋口 祥平、張 淑美、下平 和久、坂口 みほ、松澤 正浩、赤松 泰次

デノシンに抵抗したサイトメガロウイルス(以下CMV)感染を伴う潰瘍性大腸炎の再燃に対し、ホスカビルが著効した症例を経験したので報告する。症例は21歳、男性。2009年6月に潰瘍性大腸炎(全結腸炎型)と診断され加療を受けたが、再燃と寛解を繰り返していた。2011年4月より発熱、粘血便、排便回数の増加(10行/日以上)を認めたため当科受診し、下部消化管内視鏡検査にて潰瘍性大腸炎の再燃を認めた。5-ASA製剤に加えてステロイド1mg/kg投与し外来治療を行ったが改善せず、5月中旬より39度台の高熱と腹痛が出現したため、外来での加療は困難と判断して入院加療に切り替えた。入院時の重症度は「重症」で、CMVpp65抗原が陽性を示したため、CMV感染を伴った潰瘍性大腸炎の増悪と考えられた。外来での治療に加えて、デノシン500mg/日と白血球除去療法を開始したが症状は改善しなかった。第9病日の下部消化管内視鏡検査では横行結腸に多発潰瘍を認め、CMVpp65抗原陽性細胞数の著明な増加を認めた。デノシンを750mg/日に増量し、パルス療法および中心静脈栄養管理としたが症状の改善はみられなかった。そこで、大腸全摘術を視野に入れながらデノシンをホスカビル3000mg×3回/日に変更したところ、CMVpp65抗原の陰性化と症状の著明な改善を認め、第30病日退院した。CMV感染を伴う潰瘍性大腸炎は一般に治療抵抗性であることが良く知られているが、デノシン抵抗性でホスカビルが著効した潰瘍性大腸炎の報告は医中誌で検索した限りではこれまでなかった。