日本消化器内視鏡学会甲信越支部

35.被包化癌性腹水を内瘻化した1例

信州大学 医学部附属病院 消化器内科
渡邉 貴之、丸山 真弘、米田 傑、丸山 雅史、伊藤 哲也、児玉 亮、村木 崇、浜野 英明、田中 榮司
信州大学 医学部附属病院 内視鏡センター
新倉 則和

症例は60歳代、女性。2006年腹膜癌の診断後、複数回の手術・化学療法を施行するも徐々に治療効果が認められなくなり2010年9月best supportive careの方針となった。10月著明な腹水貯留に伴い経口摂取や歩行が困難となり入院となった。CTでは胃前壁側と後壁側に被包化された腹水を認め、胃は前後壁より高度に圧排されていた。経皮的腹水ドレナージは困難であり、十分なinformed consentの後に経胃的な内瘻化術を試みる方針とした。EUSガイド下に胃前壁側被包化腹水を穿刺し経鼻嚢胞ドレナージチューブを留置した(第1病日)。第4病日胃後壁側被包化腹水に対してのドレナージを施行した。直視鏡での観察時、食道胃粘膜は脆弱かつ易出血性であったため超音波内視鏡の挿入は困難と判断し、直視鏡下にポリペクトミースネアを用いて通電穿刺し内瘻ステントを留置した。第8病日に前壁側ドレナージチューブを内瘻ステントに変更し第18病日に自宅へ退院した。退院後1ヶ月は自宅での生活を送ることが可能であり、永眠されるまでの2か月間に感染や出血などの合併症は認めなかった。被包化癌性腹水を経胃的に内瘻ドレナージすることで著明なADLの改善を認めた1例を経験したので報告する。