日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34.稀な偶発症である膵管ステント虫垂内迷入を認めた1例

山梨大学 医学部 第1内科
松田 秀哉、高野 伸一、深澤 光晴、高橋 英、浅川 幸子、佐藤 光明、辰巳 明久、佐藤 公、榎本 信幸

 症例は73歳女性。背部痛を主訴に近医を受診し、胆石膵炎と診断され2011年2月8日に当科入院となった。ERCPを施行したが胆管挿管困難例であり、膵管ガイドワイヤー法による胆管挿管後にESTおよび排石を施行した。膵炎予防として自然脱落型膵管ステントを留置した。留置した膵管ステントは2日後のレントゲンにて脱落を確認し退院となった。経過観察で施行した3月9日のCT検査にて、虫垂内に迷入した膵管ステントを認めた。腹痛や発熱は認めず、待期的に下部消化管内視鏡検査を施行し、虫垂内に迷入した膵管ステントを抜去した。抜去後も特に自他覚所見に問題なく経過している。 自然脱落型膵管ステントは乳頭浮腫によるERCP後膵炎の予防目的に留置される。ステント留置数日後にレントゲンにて脱落を確認するものの、内視鏡的に抜去するステントとは異なり、本症例の様に脱落したステントが虫垂内に迷入することがまれに存在する。胆道プラスティックステントの脱落による虫垂内迷入は閉塞性虫垂炎の原因となり、これまで世界で2例の報告がある。本来、脱落することが前提である自然脱落型膵管ステントの迷入は注意すべき偶発症と考え報告する。