日本消化器内視鏡学会甲信越支部

32.内視鏡的処置で改善した,脱落胆管チューブステントによる大腸穿孔の1例

長野市民病院 消化器内科
神保 陽子、越知 泰英、長谷部 修、原 悦雄、須澤 兼一、関 亜矢子、長屋 匡信、多田井 敏治
長野市民病院 消化器外科
成本 壮一

症例は70代男性. 2008年11月に当院外科で,中部食道進行癌にて手術と術後放射線化学療法を行った. 2010年6月に肝左葉の転移巣に対して,拡大肝左葉切除を施行した.術中に肝門部胆管狭窄予防目的で胆管内埋め込み型内瘻ステントを留置した. 2010年9月の定期検査にてステントの総胆管内への脱落を認めたため,ERCPを施行しESTを付加して回収した.その際に再狭窄予防目的に8.5Fr. プラスティックステントを胆管内埋め込みで留置した.

2011年1月上旬に38℃台の発熱と右季肋部痛が出現して入院した.胆管炎を疑い腹部CTを施行したところ,胆管ステントが脱落し上行結腸中部で腹腔内に穿孔していた.穿孔したステント周囲には膿瘍形成を認めたが,術後癒着の影響により炎症波及範囲は比較的限局していた.このため直ちに開腹手術は行わず,穿孔したステントを内視鏡的に大腸内へと誘導・抜去し,穿孔部位をクリップ縫合して抗生剤投与にて経過観察した.処置後は速やかに解熱と炎症反応の改善を認め6日後に退院した.