日本消化器内視鏡学会甲信越支部

31.EUS-FNAが治療方針決定に有用であった膵癌の2例

新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
塩路 和彦、小林 正明、成澤 林太郎
新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
冨永 顕太郎、林 和直、瀧澤 一休、冨樫 ただゆき、青柳 豊

今回我々は診断に苦慮したもののEUS-FNAにて確診が得られ、治療方針決定に有用であった膵癌症例を経験したので報告する。 症例1は60歳代の男性。体重減少とCA19-9の上昇あり、MRIにて膵内に明らかな異常は指摘できないが、SMA周囲に異常影を認め当科紹介となった。EUSでは膵鉤部に10mmほどの低エコー腫瘤をみとめ、SMA周囲の軟部影と連続していた。臨床経過からはSMA、SMVに進展を伴う切除不能膵癌が考えられFNAを施行した。 十二指腸下行脚より血管周囲の軟部影を直接穿刺。細胞診にてClass Vと診断され現在ジェムザールによる全身化学療法を施行中である。 症例2は70歳代の男性。上腹部痛にて上部消化管内視鏡検査を施行したところ狭窄を伴う十二指腸潰瘍を認め、膵癌の十二指腸浸潤疑いで当科紹介となった。潰瘍部の生検では壊死組織しか得られず。CTにて膵内に明らかな腫瘤を認めないが、十二指腸下行脚周囲に濃度上昇あり。潰瘍による炎症性変化、壁外進展主体の膵癌、groove pancreatitisが疑われた。EUSで十二指腸周囲に低エコー領域を認め、同部に対しFNAを施行。細胞診にてClass V、groove領域に発生した膵癌の確診が得られ、4月上旬手術予定である。