日本消化器内視鏡学会甲信越支部

29.慢性膵炎急性増悪後の仮性膵嚢胞、膵性胸水に対し内視鏡的ドレナージが有効であった一例

新潟県立新発田病院
青木 洋平、夏井 正明、中村 隆人、水澤 健、瀧澤 一休、岡 宏充、坪井 清孝、松澤 純、渡邉 雅史

症例は59歳の男性、慢性膵炎急性増悪の診断にて当科に入院した。膵炎は予後因子2点、CT grade3であり、蛋白分解酵素阻害剤などの保存的治療を開始した。しかし、腹痛が持続し、CTでは膵炎の増悪はないものの、仮性膵嚢胞の増加、増大を認めた。保存的治療を継続したところ、徐々に症状、血液検査所見とも改善した。CTでは嚢胞は縮小したが胸水は増加した。蛋白分解酵素阻害剤を漸減中止し、食事を開始したところ、症状、血液検査所見が再増悪し、CTにて左胸水の更なる増加を認めた。また、CTでは主膵管から嚢胞、胸腔へ連続する瘻孔を認め、胸水中アミラーゼは高値であり、膵性胸水と診断した。再度、保存的治療を行ったが嚢胞、胸水の減少は認めなかった。ERCPを施行し、ERPにて膵体部主膵管と嚢胞および胸腔との瘻孔を認めたため、ENPDを主膵管内に留置した。ENPDによるドレナージと禁食、補液で経過観察しCTで左胸水は消退し嚢胞も縮小した。ENPD留置16日後のERCPでは前述のろう孔は造影されず、ENPDを抜去した。食事再開後も症状の増悪は認められず退院した。