日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27.ERCP後膵炎の発症予測における膵型アミラーゼ測定の有用性について

長岡中央綜合病院 内科
福原 康夫、高橋 一也、渡邉 ゆか理、外池 祐子、佐藤 明人、渡辺 庄治、佐藤 知巳、富所 隆、吉川 明

【目的】ERCP後膵炎は時に致命的となりうる重大な偶発症である。膵炎の発症予測を行うことは患者の経過観察および早期治療の観点から重要であるが、統一された基準は存在せず、また各種膵酵素の診断能を比較検討した報告は少ない。当科ではERCP1時間後に総アミラーゼ(T-Amy)と膵型アミラーゼ(P-Amy)の測定を行っており、今回その有用性について後ろ向きに検討した。【方法】過去5年間に施行したERCP関連手技1361件を対象とし、1時間後のT-AmyとP-Amyにおける膵炎の発症予測診断能をROC曲線に基づいて比較検討した。なおERCP後膵炎の定義はCottonの分類に基づき、翌日のT-Amyが正常上限の3倍以上かつ腹痛が持続しているものとした。【結果】ERCP1時間後のT-Amy およびP-AmyのROC曲線下面積は各々0.813、0.843であり、P-Amyの診断能が優れていた。T-Amyでは正常上限の2倍、P-Amyでは正常上限の3倍をカットオフ値とした場合に最も正診率が優れていたが、感度が各々69.6%、74.1%と低いことから測定のタイミングが早すぎる可能性が示唆された。【結論】P-Amyの測定はERCP後膵炎の発症予測に有用であるが、適切な測定時間とカットオフ値については今後の検討が必要である。