日本消化器内視鏡学会甲信越支部

26.閉塞性胆管炎を繰り返し緩徐に発育した粘液産生胆管腫瘍(IPNB)の一例

長野市民病院 消化器内科
須澤 兼一、長谷部 修、原 悦雄、越知 泰英、関 亜矢子、長屋 匡信、多田井 敏治、神保 陽子
長野市民病院 外科
林 賢、成本 壮一
長野市民病院 病理診断科
保坂 典子
長野市民病院 放射線科
今井 迅

症例は63歳女性.2007年9月発熱・腹痛・肝機拍瘧Qを認め当科受診.US/CTでは総胆管拡張9mm,肝S3多房性嚢胞22mm,肝内多発性微小嚢胞を認め,右葉の微小嚢胞の一部は造影効果を伴っていた.ERCP/IDUSでは胆管拡張以外には結石や腫瘍は認めなかった.胆管炎・微小肝膿瘍・胆管過誤腫症と診断し,抗生剤投与にて自他覚症状およびCT所見の改善を認めた.その後も時々発熱・腹痛を繰り返していたが,2010年9月肝機拍瘧Q・胆管拡張を認めたため再度精査目的に紹介となる.血液検査では肝胆道系酵素上昇と軽度の炎症所見を認めた.US/CT/MRIでは総胆管拡張は13mm,肝S3の多房性嚢胞は30mmと増大していたが,肝内多発性微小嚢胞はほぼ不変であった.ERCPでは胆管内に中等量の粘液を認めたが,S3嚢胞は描出されなかった.IDUSでは嚢胞内壁在結節は認めず,胆道鏡(スパイグラス)では可視範囲内にB3・B4分岐部を含め腫瘍は認めなかった.左胆管生検では異常なく,胆汁細胞診はClass3であった.以上より肝S3原発IPNBと診断し,2010年11月17日完全腹腔鏡下左肝切除術施行,第9病日に退院した.病理組織学的にはIPNBは低異型度腺腫(切除断端陰性)であり,背景肝には広範囲に慢性閉塞性胆管炎の所見を認めた.