日本消化器内視鏡学会甲信越支部

25.膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)で経過観察中に発症し,PET-CTが診断の契機となった胆管細胞癌の1例

長野市民病院 消化器内科
越知 泰英、多田井 敏治、長谷部 修、原 悦雄、須澤 兼一、関 亜矢子、長屋 匡信、神保 陽子
長野市民病院 消化器外科
林 賢、成本 壮一

症例は70歳代女性. 2009年の健診で膵頭部に嚢胞性病変を指摘されて,精査目的に同年4月に当科へ紹介された.精査の結果,分枝型IPMNで腺腫程度の病変と診断し,近医で経過観察を行う方針とした.2010年3月以降CA19-9が60→500U/ml台へと上昇したため,同年8月に再度紹介された. IPMNには明らかな浸潤癌所見を認めず,その他には造影CTで肝S5胆嚢床に小嚢胞性病変の集簇と淡い低吸収域の出現を認めた. CA19-9急上昇の原因となりうる病変を認めなかったためPET-CTを施行したところ,肝S5胆嚢床の領域に淡い集積を認めた.原発性肝癌を疑ったが明瞭な腫瘤として同定できなかったため手術を前提に短期経過観察したところ,10月末に再検したCTで低吸収域に増大傾向を認めた.以上の経過より胆管細胞癌と診断して11月に肝中央2区域切除術を施行した.病理ではCTでの低吸収域に相当する部分に浸潤型の中分化型腺癌を認め,小嚢胞性病変は腫瘍周囲の拡張した胆管であったと考えられた.