日本消化器内視鏡学会甲信越支部

24.吐血にて発症し、総胆管結石が原因と考えられる総胆管十二指腸瘻の一例

地方独立行政法人 長野県立病院機構 県立須坂病院 消化器内科
清水 結華、下平 和久、張 淑美、松澤 正浩、坂口 みほ、赤松 泰次

症例は85歳男性。吐血で救急搬送され、緊急内視鏡にて十二指腸に小潰瘍を認め、クリップを用いて止血した。また腹部CTでは、総胆管に2×2cm大の結石を認め、出血性十二指腸潰瘍及び総胆管結石と診断した。初回緊急内視鏡から6時間後、再度吐血を認めたため、再び緊急内視鏡を施行したところ、クリッピングを行った部位に一見穿孔のような深い粘膜欠損を認めた。粘膜欠損の深部に胆石様の物質が見られたため、X線透視室へ移動して、同部位より造影を施行したところ、胆管が造影され、結石と思われる透亮像を認めた。以上より総胆管結石を伴う総胆管十二指腸瘻と診断し、緊急ERCを施行してERBDtubeを留置した。胆管炎が鎮静した後に経乳頭的砕石術を施行し、瘻孔開存のまま経過をみているが、発熱等の症状は認めていない。本例において総胆管十二指腸瘻を形成した原因として1、クリッピングによる機械的損傷、2、総胆管結石による胆管内圧の上昇の二つが考えられるが、総胆管十二指腸瘻の形成過程を経時的に観察した稀な症例と考えられた。