日本消化器内視鏡学会甲信越支部

23.EUS-FNAにより確定診断しえた膀胱癌直腸浸潤の一例

長野県立須坂病院消化器内科
張 淑美、下平 和久、坂口 みほ、松澤 正浩、赤松 泰次

症例は71歳の女性。2008年に膀胱上皮癌と診断され、経尿道的膀胱腫瘍切除術、化学療法が施行された。その後再発を認め2010年4月に膀胱全摘除術が行われた。2010年12月始めより排便困難となり、腹部膨満感を主訴に当院外来を受診した。数日後に施行した下部消化管内視鏡検査では直腸に全周性の狭小化を認め、粘膜面は発赤を認めるが上皮性の変化に乏しく、壁外から腫瘍の浸潤または4型大腸癌が疑われた。生検組織診では慢性炎症所見のみで、異型細胞は認めなかった。外来で諸検査を予定していたところイレウス症状が出現し、腹部CT検査で結腸全体に拡張と直腸壁の肥厚を認めた。同日経肛門イレウス管を留置し、腹部症状の改善を認めた。通常の鉗子生検では診断がつかないため、EUS-FNAを施行したところ尿管上皮系の異型細胞が散見され、膀胱癌の直腸浸潤と考えられた。その後、人工肛門を造設し、現在は泌尿器科にて化学療法を行っている。CT所見では膀胱癌の浸潤は否定的であったが、EUS- FNAにて診断が確定し、その後の治療方針を決定することが可狽ニなった。通常の鉗子生検では確定診断が困難な場合、ボーリング生検などとともにEUS-FNAも選択肢の一つになると考えられた。