日本消化器内視鏡学会甲信越支部

21.H. pylori(HP)三次除菌療法で治癒したCap polyposis(CP)の1例

丸の内病院 消化器内科
中村 直、山本 香織
信州大学 医学部保健学科 生体情報検査学
太田 浩良

症例は28歳の女性で2010年5月に血便が続くため当院を受診した。大腸内視鏡(CS)を行うとS状結腸を中心に発赤した隆起性病変を認め、楓ハには白苔様の粘液の付着を認めた。また、地図状の発赤した粘膜の部分も認めた。生検では腺管は過形成し、間質には炎症細胞浸潤が認められCPと診断した。HP除菌療法が奏功したCPの報告が相次いでいることから、胃粘膜培養を行うとCAM耐性のHPが検出された。二次除菌療法を7日間行ったが、その後も一日5−6行の下痢と血便が続いた。除菌2ヶ月の尿素呼気試験(UBT)が陽性であったため、三次除菌としてラベプラゾール40mg、アモキシシリン2000mg、シタフロキサシン200mgを7日間内服した。その後は下痢の改善と浮腫の軽減、体重増加がみられた。その後のUBTは陰性で、CSでも発赤する隆起や地図状粘膜は改善していた。HP除菌療法が奏功する機序として、HP感染による免疫学的な異常の改善とする説や、HP以外の微生物が除菌されるためとする説がある。今回、二次除菌でHPが除菌されなかった際にはCPも改善せず、三次除菌でHPが除菌されたとともにCPが改善したことから、CPの発症にはHPの免疫学的な機序の関与の方が密接に関与していると考えられた。