日本消化器内視鏡学会甲信越支部

17.カプセル内視鏡で発見された、多発性回腸カルチノイドの一例

長野市民病院 消化器内科
関 亜矢子、長谷部 修、原 悦雄、越知 泰英、須澤 兼一、長屋 匡信、多田井 敏治、神保 陽子
長野市民病院 消化器外科
沖田 浩一
長野市民病院 病理診断科
保坂 典子

症例は40歳代、男性。心房細動に対し循環器内科で抗凝固療法中、定期診察で貧血と下血があったため、上部消化管出血疑いで入院した。入院後に下血は無かったが、Hb5.6,Fe15,フェリチン2.4と鉄欠乏性貧血が認められ、腫瘍マーカー正常、PT-INR2.0と軽度延長を認めるのみであった。抗凝固剤を中止し、EGDを行ったが出血性病変は無く、カプセル内視鏡では、陥凹を伴う大小3つのSMT様病変が回腸に認められた。転移性小腸腫瘍や悪性リンパ腫を疑い、経肛門的シングルバルーン小腸内視鏡を施行したが病変に届かなかった。また胸腹部CT、PET/CTでも小腸に異常は無く、他臓器癌やリンパ節腫脹も認められなかった。出血性の原発性小腸腫瘍が疑われた為、外科で小腸部分切除術を施行した。術中所見では、病変は回盲弁より1.5m口側にある3つの硬い小結節で、小腸の外から明瞭に触知出来た。病理組織診断は1mm〜10mm大の4つのカルチノイドで、一部に固有筋層とリンパ管への浸潤がみられ、Ki-67index2〜3%であった。本邦では、小腸カルチノイドは全消化管カルチノイドの2.8%と少なく、また多発病変は希な症例と考えられた為報告する。