日本消化器内視鏡学会甲信越支部

16.小腸多発カルチノイドの2例

新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
河内 裕介、小林 正明、成澤 林太郎
新潟大学医歯学総合研究科 消化器内科学分野
本田 穣、岩永 明人、横山 純二、川合 弘一、青柳 豊
新潟大学医学部医学部 保健学科 臨床生体情報学
岩渕 三哉

【背景】本邦では小腸におけるカルチノイドの頻度は低く、その中でも多発例の報告は稀である。小腸多発カルチノイドの症例を2例経験したので、文献的考察を加えて報告する。【症例1】 70歳代男性。CTにて腸間膜の結節性病変を指摘され経肛門的小腸バルーン内視鏡を施行された。回腸に5-10mmのSMT病変を3個指摘され、生検組織からカルチノイドと診断された。小腸部分切除術を施行され、切除標本では15個の多発カルチノイドが認められた。【症例2】 70歳代 男性。カプセル内視鏡にて回腸に潰瘍性病変を指摘され精査目的に紹介された。小腸バルーン内視鏡で回腸に約10mm大の潰瘍を伴うSMTとその口側にも4mmのSMTが認められた。生検組織からカルチノイドと診断され、小腸部分切除術を施行された。【考察】本邦では小腸腫瘍におけるカルチノイドの頻度は1.38%といわれ、多発例の報告も少ない。しかし、欧米では小腸腫瘍の中では癌に次いで2番目に頻度が高いとされ、小腸カルチノイドの多発は15〜35%に認められるとの報告もある。小腸カルチノイドの診断の際には、多発の可柏ォも考慮にいれて診断を行なう必要があると考えられる。