症例は60歳代男性。スクリーニング目的のEGDで胃に隆起性病変を認め、当科に紹介された。胃体上部大弯に2cm超のSMT、胃体中部後壁に1cmのSMT、体部大弯中心に小隆起性病変の多発を認め、生検にてcarcinoidと診断された。ガストリンが著明高値 (2790 IU/L) を示したが、他のホルモンは正常であった。ペプシノーゲンI/II低下、尿素呼気試験陽性を認めたが、抗内因子抗体陰性、抗壁細胞抗体陰性であった。膵と十二指腸に腫瘤性病変を認めなかった。胃全摘術後の病理診断では胃体上部大弯の病変はatypical carcinoid, pSM (sm3), ly0, v0, 24×22×8mmであり、リンパ節転移を認めなかった。その他に無数のendocrine cell micronest (ECM)、多数のneoplastic ECMとcarcinoidを認め、背景粘膜は萎縮性変化を呈していた。WHOはcarcinoidをA型胃炎に関連するType I、Zollinger-Ellison症候群やMEN1型に伴うType II、散発性のType IIIに分類しているが、本症例はType Iに該当するものと考えられた。