日本消化器内視鏡学会甲信越支部

10.ERCPを契機に発見されBall valve syndromeをきたした胃GISTの1例

丸子中央総合病院 内科
金子 靖典、沖山 葉子、塚原 光典、松澤 賢治、丸山 和敏
丸子中央総合病院 外科
尾崎 一典、佐々木 裕三

症例は87歳女性。両側硬膜下血腫の既往あり、多発性脳梗塞、アルツハイマー型認知症にて施設入所中であった。2010年9月、発熱、黄疸、食欲不振にて当院紹介となり、血液検査で炎症反応及び肝胆道系酵素の上昇を認めた。腹部CTでは肝内胆管拡張及び総胆管結石が指摘された。第5病日ERCP検査を施行し総胆管結石の排石を確認したが、この際胃体下部前壁に有茎性隆起性病変を認め,隆起に連続する腫瘍が十二指腸球部に陥入していた。この時は内視鏡的整復を行い経口摂取再開としたが、摂食量にむらがあり、全身状態を考慮し第16病日に内視鏡的切除を行った。腫瘍は32×25mm大の充実性粘膜下腫瘍であった。病理組織学的には紡錘形細胞の増殖を認めc-kit(+),CD34(+),α-SMA(−),S-100蛋白(−)であり,狭義のGISTと診断した。Ball valve syndromeをきたす病変には上皮性有茎性腫瘍(炎症性線維性ポリープ、過形成性ポリープなど)や胃癌、粘膜下腫瘍(脂肪腫、筋原性腫瘍など)があるがGISTの報告は少ないため、文献学的考察を加えて報告する。