日本消化器内視鏡学会甲信越支部

6.5年間の内視鏡的経過観察が可能あった食道原発悪性黒色腫の1例

佐久総合病院 胃腸科
武田 晋一郎、小山 恒男、友利 彰寿、石井 英治、宮田 佳典、高橋 亜紀子、篠原 知明 、岸埜 高明、國枝 献治 、桃井 環

症例は70歳代、女性。胃癌により胃全摘術の既往がある。2006年のEGDにて、Mt前壁に黒色の色素沈着を広範囲に認めメラノーシスと診断した。28月後のEGDでUt〜Mtに黒色変化は増大し、前壁に黒色が強い領域を認め、生検にてメラノーマと診断された。EUSの結果は粘膜固有層内の病変であり、CT、PET-CTでは他臓器に悪性黒色腫の所見を認めず食道原発悪性黒色腫、T1a N0 M0 stageIと診断されたが、御本人の希望により経過観察の方針となった。初回内視鏡から36月後のEGDでは黒色変化はより明瞭となったが、厚みの変化は認められなかった。さらに6月後の内視鏡ではMtの前壁に2カ所の楓ハ平滑で黒色の亜有茎性隆起性病変が出現したが、自覚症状はなく経過観察となった。6月後に通過障害が出現し、EGD上は隆起の増大により内腔の狭小化を伴っていた。この時点でも手術や化学療法による治療は希望されず、30GyのRTを施行した。通過障害は軽減し食事摂取も可能ニなり訪問診療を行って経過をみている。食道原発悪性黒色腫は進行が早く、予後不良な疾患である。本例は表在平坦型病変から隆起型病変へ発育する課程を約5年間経過観察し得た貴重な症例と思われ、報告する。