5.腸管症型T細胞リンパ腫の一例

症例は、50才代の男性。下肢浮腫と腹痛を自覚し、近医で低蛋白血症と蛋白漏出性胃腸症を認め紹介入院。CTで小腸壁の肥厚、小腸造影では狭窄を認めた。小腸内視鏡検査で藷�指腸下行部から白色調で浮腫状の絨毛と多発する潰瘍を認め、空腸では狭窄によりスコープの通過は困難であった。回腸には地図状の白苔を有する多発潰瘍性病変を認めた。藷�指腸、回腸の生検でいずれもCD3(+)、CD5(-)、TIA-1(+/-)のT-Cellがびまん性に増殖し、腸管症型T細胞リンパ腫と診断した。骨髄生検やGaシンチでは他臓器への浸潤を認めなかった。小腸粘膜の培養でM.spesisが陽性であったことから、4剤併用による抗酸菌の治療を先行して開始したが、その後の検索で非定型抗酸菌感染と考えられた。CHOP療法を１コース、続いてCHASE療法を4コース施行したところ、藷�指腸下行部の潰瘍は瘢痕化し輪状の狭窄を呈したが、生検ではリンパ腫細胞の残存を認めた。診断から7か月が経過した時点で自己末梢血造血幹細胞移植を行った。腸管症型T細胞リンパ腫は稀で、化学療法に治療抵抗性とされることから、文献的考察を含めて報告する。