日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.trisomy 8を伴う骨髄異形成症候群にみられた小腸潰瘍の1例

済生会新潟第二病院 消化器内科
長谷川 祐紀、本間 照、関 慶一、窪田 智之、阿部 寛幸、長島 藍子、広瀬 奏恵、石川 達、富樫 忠之、吉田 俊明、上村 朝輝
済生会新潟第二病院 病理
石原 法子
新潟大学教育研究院 分子・診断病理
味岡 洋一

骨髄異形成症候群(MDS)に腸管Behchet様の潰瘍を合併した症例が、主に本邦から30例ほど報告されている。特異的な染色体異常として殆どの症例にtrisomy 8を認めている。症例は80歳代、男性。5年前に四肢関節痛、炎症反応陽性の精査目的に受診、同時に正球性貧血も指摘された。抗生剤で一旦軽快したが、CRPは陰性化せず経過観察となった。8カ月後リウマチ性多発筋痛症の疑いでステロイドが投与された。2年前から貧血が進行し、上部下部消化管内視鏡検査を行ったが出血源は不明であった。小腸の検索は行われなかった。その後、発熱による入退院を繰り返した(その間NSAIDsの継続使用はなかった)。貧血はさらに進み、輸血を施行された。血液内科で骨髄穿刺が施行され、MDS with myelocyte proliferationと診断され、その際trisomy 8が確認された。血便が出現し、下部消化管内視鏡検査を行った。大腸に異常所見は見られなかったが、終末回腸、回盲弁から約40cmまで挿入し、大きさ約10mmの下掘れ潰瘍が多発していた。潰瘍の分布に規則性は認められなかった。Behchet病あるいは単純性腸潰瘍に類似した潰瘍と考えられた。他のBehchet症候は認めなかった。