症例は50歳代の女性。5-6年前よりアルコール性肝硬変を指摘され、近医に通院中であった。特に誘因なく下腹部痛、血便が出現したため近医を受診、同日に緊急入院となった。保存的に加療されていたが、翌日には血中ヘモグロビン値は5.6 g/dl(入院時 9.4 g/dl)まで低下し、輸血を必要とする状態となった。大腸内視鏡検査では憩室を認めるものの出血源は不明であり、上部消化管内視鏡検査を行ったところ、藷指腸下行部に鮮血の付着を伴う静脈瘤を認めた。同部からの出血と考えられ、当院に緊急搬送された。腹部造影CTでは、右卵巣静脈へつながる直径約5mmの藷指腸静脈瘤を認め、ヒストアクリルを用いた内視鏡的硬化療法の適応と判断した。同日、透視下にリピオドール混合の71.4%ヒストアクリルを0.7ml注入し、治療を終了した。その後再出血はなく、全身状態良好のため、第4病日に退院となった。 藷指腸静脈瘤に対する治療としては、内視鏡的治療、IVR、外科手術などの選択肢があるが、静脈瘤の供血・排血路の状態、太さ、全身状態などを考慮して選択する必要がある。文献をもとに治療の選択方法を検討し、報告する。